競売の特別売却で物件を購入する手続きと流れ!メリット・デメリットも解説
私はここ数年不動投資に積極的ではなく、新しい物件を購入していませんでした。
ここ数年、アベノミクスに依る量的緩和の影響で銀行に資金がじゃぶじゃぶ余っている状況ですが、特に民間に設備投資などの需要が不足していることから貸出先もなく、銀行は不動産投資家に融資を行うことを積極的に進めてきました。
情報化時代で、一部の人のみが取り組んでいてサラリーマンには縁のない世界だった不動産投資が一気に一般化したことも相まって、頭金すらないのに銀行から資金調達してマンションやアパートを購入する素人投資家が爆発的に増えたこともあり、物件の相場が大幅に上がってしまったため利回りが低下して買いたいと思える物件を見つけることが出来なかたのです。
しかし、2017年の春頃から個人投資家への融資を絞るような動きが金融機関に出てきて、その影響がじわじわ出てきたのか昨年後半からポツポツと良さげな物件も出てきているような感じがします。
そのような動きと連動しているのかたまたまか、昨年末に競売により2件の戸建てを購入しました。いずれも競争による入札ではなく、売れ残りの特別売却にて購入しました。
競売の特別売却で物件を購入するのは、5年前に自社倉庫を特別売却で購入して以来久々のことだったので、手続きのこととかすっかりと忘れていたのが正直なところです。
そこで本日は競売の特別売却について手続の方法や流れ、その実際について簡単に解説したいと思います。忘れないように自分用のメモという意味もあります。
不動産競売の特別売却とは
そもそも不動産競売とはどのようなものなのでしょうか。
住宅を購入する際には、多くの方がローンを組んで購入することになるかと思いますが、その際には必ず購入するマイホームを担保としてとられることになります。
購入する不動産を担保として確保しておけば、万が一返済が滞っても、貸したお金の一部は確実に回収することが出来ます。実際には銀行は融資にあたって保証会社と保証委託契約を結んでいますので、競売の前に保証会社が銀行に代位弁済を行います。つまり保証会社がローン残額を一括で銀行に支払い、債権者は銀行から保証会社に変わるのです。
そうなると、住宅ローンの借り手は、ローンの残金と金利を保証会社に支払わなくてはいけなくなります。銀行への返済が滞納しているような状態で返済できるわけがありませんので、結局のところ保証会社によって裁判所へ競売の申し立てが行われる事になってしまうのです。
(競売にかけられる前に任意売却で不動産を売るという選択肢もあります。)
物件が競売にかけられると競争入札が行われ、一番高額で入札した個人ないしは法人が物件を落札します。落札され代金の支払いが行われると物件は売却されていき、売却された金額分のローン残高が減る形になります。家まで取られて、なおローンの残額が残るケースが多いのが悲惨なところです。
しかし、物件によっては誰ひとりとして入札しないケースも有るのです。物件の最低入札価格は、主に積算価格などから決められ掲示されますが、購入を考える転売業者の計算で転売益が期待できなかったり、賃貸用に購入を考えている不動産投資家の計算で利回りがショボかったりすると、誰も入札しないというケースも有るのです。
そうなると特別売却という流れになります。特別売却は売れ残った競売物件を入札額の高さではなく先着順で販売してしまう手続きです。一般の入札が終わると、入札のなかった物件は特別売却として出されます。
特別売却の期間が始まると、最初に地裁の執行官室に買受申し出をした人が購入できます。特別売却開始日の朝9時ないしは10時ごろの開始時間(地裁の支部によって異なる)に複数人が執行官室を訪れた場合は、早く来た順ではなく同時の申し出と見なされて、競争入札が行われます。そなわち一般の競売の期間入札と同じように、一番高い金額を提示した者が入札できるのです。
良い物件が何故か売れ残ってしまうこともあり、競争入札になるケースもありますが、そもそも一度は売れ残ったものですから多くのケースで競争無しで買受が出来るのです。
競争がない場合は、買受可能価格という最低入札価格よりも更に2割安い価格で購入できますので、特別売却は非常にお得なのです。
特別売却の買受申し出と手続きの流れ
それでは特別売却での買受方法および買受申し出以降の流れについて見ていきましょう。
まず一般の競売の競争入札期間が終わると、売れ残った物件が特別売却の物件として掲示されます。地裁に出向いて確認することも出来ますが、今時そんな面倒なことをする人もいないでしょう。
すべてネット上でリアルタイムで見ることが出来るのです。BIT 不動産競売物件情報サイトから物件情報の閲覧から3点セットのダウンロードまで可能です。
詳しい物件情報の検索の仕方や見方は、競売の期間入札の方法のページで解説していますのでそちらをご覧ください。一般的な期間入札も特別売却も、物件情報の見方は同じです。
特別売却期間の開始日の午前0時からBIT上に情報が開示されますので、すぐに確認して精査し、買受申し出する場合は翌日の朝一番で地裁に到着できるようにしましょう。
買受申し出の方法
特別売却の物件の内容を確認して購入の意志を持ったら、特別売却の買受申し出期間に担当の地裁の支部の執行官室を訪れます。地裁によって異なりますが、特別売却申し出期間の朝9時開始など時間が決まっているので、出来る限り早く行きましょう。人気物件ですと開始時に売れてしまうこともあります。
持ち物は、個人または法人を証明するもの、実印、保証金です。買受申し出の用紙を提出する必要がありますが、その場でも貰えます。ただ、できれば事前に用紙をもらって書き込んでおくほうが確実でしょう。
個人や法人を証明する資格証明証は必須です。個人ですと住民票(マイナンバーが記載されていないもの)、法人で入札する場合は履歴事項全部証明書など、それぞれを公的に証明する書類が必要になります。
印鑑は実印が必要です。法人の場合は代表者印など印鑑登録してある印鑑を持っていきます。
保証金ですが、通常の競売の競争入札時と同じで、最低落札価格の2割を納める必要があります。特別売却の場合は最低落札価格よりも2割安い買受可能価格で購入することが出来ますが、買受申し出時に収める保証金は、あくまで最低落札価格の2割であることに注意しましょう。
しかも通常の競売の競争入札では、保証金は予め専用の振込み用紙で裁判所の口座に入金した上で、振込時に金融機関からもらう控えを書類に添付して入札する形になりますが、特別売却の場合は現金を持って執行官室を訪れる形になります。
もちろん振込用紙で裁判所の口座に入金してから、振込の控えを持って特別売却の買受申し出をすることは出来ますが、裁判所の口座に反映されるのに時間がかかり、裁判所での確認にも時間がかかるため、買受申し出が遅れて先に申し出した人に買われてしまう恐れがあります。
実際の買受申し出の手続きは、執行官室で指示された通りに進めていけばOKです。地裁の支部によって全然異なりますが、一度地裁内の会計課に行かされて保証金を支払って来るように指示される支部もあれば、執行官室で現金を支払って手続きが終わる支部もあります。またカウンター越しにさっと買受申し出が完了する支部もあれば、応接スペースに通されて丁寧な説明を受ける支部もありました。
売却決定期日の通知が届く
買受の申し出の手続きが終わると、あとは必要な郵送物が届くのを待つのみとなります。競争入札ではありませんので買受申し出を受け付けてもらった時点でほぼあなたが購入することが決まっています。
まず最初に届くのが売却決定期日の案内です。こちらの通知を受け取れば、あとは売却決定が出るまで待つのみとなります。買受申し出の2週間後前後になります。
売却決定の通知が届く
このあとは通常の期間入札と同様の流れになります。不服の申立などがなければ、予め予告されていた売却決定期日に売却が決定され、売却決定の通知が郵送されてきます。
こちらの通知には、残金の支払い用紙が入っていますので、銀行などで残金の振込を行ったあとに管轄の地方裁判所に出向いて残りの手続きを行います。ここからは通常の期間の入札で落札した場合と同じ流れになります。
不動産競売の落札後の流れの落札金額から保証額を引いた残額を支払う以降をご覧いただきまして、通常の期間入札同様の必要書類を揃えて管轄の地方裁判所で手続きを行います。
以降の手続きである、残金の支払い、所有権移転、引渡命令の申し立て、占有者との交渉から強制執行までの流れは、通常の期間入札の場合と同様になりますので、上記のページをご参照ください。
メリット
全体の流れがわかったところで、最後に特別売却のメリットとデメリットを解説したいと思います。
最大のメリットは、非常に安く入手できるという点です。昨今は競売のおいしさが一般層にもバレてしまい、ライバルが多すぎて全然安く落札できなくなってきてしまっています。期間入札で安く物件を購入することは非常に難しくなってきています。
その点、特別売却は先着順になりますので、期間開始日の朝、執行官室に同時にライバルがいなければ、売却基準価格どころか2割安い買受可能価額で買えてしまうのです。しかも確実に!
物件にもよりますが、いくら昨今の競売の物件価格が高いとはいえ、競争の結果高くなっているわけで売却基準価格は市場価格よりも安い場合が多いのです。ましてやそこから更に2割安い買受可能価格で入手できれば非常にお得であることは間違いありません。普通はまずまともな物件は残っていませんが、万が一偶然まともな物件が売れ残ってしまっている場合は、非常にお得です。
第二に、競争入札である通常の期間入札に対して、特別売却は先着順になるため確実に入手できる可能性が高いという点です。
期間入札ですと競争が激しいため、十数回入札して初めて1回落札できるという感じになりますので、せっかくお金と時間をかけて入札しても滅多に落札できるものではありません。次々に落札できてしまっている場合は、むしろ高く買いすぎている可能性大ですので、一度入札額を見直すことをおすすめします。
その点、特別売却なら、期間初日の朝に執行官室にライバルがわらわら詰めかけていなければ、確実に購入することが出来るのです。そもそも期間入札で誰も入札せずに売れ残っているわけですから、滅多なことではバッティングしません。
私の経験ですと、以前一度バッティングしたことがあり、お互い見えないように入札書に金額を書き込んで提出したことがあります。その時は、2件の事件が特別入札に出ていて、結果的にお互い別々の物件がお目当てだったのですが、私も競争入札ということでビビって買受可能価額よりも十数万高く入札してしまいました。完全な無駄金でした。
入札前に相手方がどちらの物件目当てだとかなんとか色々質問してきて、それをかわしたり何なりでまさに競争入札といった感じの緊張感がありました。
通常の期間入札同様に、あまり熱くなって高値を書きすぎないように注意が必要です。安く入手するための競売、ましてや特別売却なのですから、不必要に高値で購入しても仕方ありません。ライバルが多い場合は諦めるのも重要です。
デメリット
一方のデメリットとしては、碌な物件がないという点があります。めぼしいものは皆こぞって期間入札で入札しますので、特別売却までまともな物件が残っていることは極めて稀です。
毎回、東京近郊の支部で特別売却を見ていると、やはり立地が恐ろしく悪い物件が多いような気がします。少々駅から離れているくらいでしたら、賃貸需要はともかくとして実需はありますので、転売業者が見逃しません。どう考えても需要のないような地域の物件はやはり売れ残りがちです。
あとは実際の価値以上に積算価格が出てしまい割に合わない物件でしょうか。競売の売却基準価格は基本的に積算価格をベースに色々と割り引かれて決まりますが、立地が悪い場所や再建築不可などにもかかわらず建物が新築同様で、皆が欲しがる価格とかけ離れた売却基準価格になってしまっている場合です。
あとは修繕に天文学的な値段がかかることが予想されている場合や、3点セットからでも分かるくらいのヤバイ占有者が住んでいる場合などもあります。あるいは、公道に出るまでに他人の所有地を通らなければいけない物件の場合、昔からの知り合いのAさんだからこそ通していたけど、Aさんを追い出した落札者は通さないなどのことが予想される物件などもあります。囲繞地通行権などありますが、競売で買ったものは普通は貸したり転売したりするものですので、面倒事を抱えているものは避けられるのが普通です。
一見まともそうな物件に見えても、恐ろしい欠陥が小さく一行で書かれていることがありますので、いつも以上に3点セットを隅から隅まで熟読する必要があります。いつも以上に慎重に精査しましょう。
第二に、買受申し出のために管轄の地方裁判所の支部に出向く必要がある点です。期間入札の場合は郵送で気軽に入札できますが、特別売却は地裁の執行官室に直接出向く必要があります。
地味に面倒ですが、ほぼ確実に買うことが出来ますので必要な労力でしょう。せっかく朝早く出向いてライバルがワラワラ殺到していたら激萎えですが・・・
結局のところお得なの?
それではまとめに入りますが、結局のところ不動産競売の特別売却というのはお得なのでしょうか?
一般的に考えて、滅多なことではまともな物件はありませんので、過剰な期待はおすすめしません。あくまでも売れ残りなので、まともな物件は非常に少ないです。
ただ、見るだけならダタですので、特別売却期間開始の日の午前0時になったら、BITで物件情報を見てみましょう。これは!という物件があったら、即座にネットで調査を開始し買いかどうか判断します。あとは朝早く起きて、必要書類をすべて揃えた上で車で出発、物件に寄って外観確認をしつつ地裁に向かいましょう。開始時刻前に地裁の執行官室に着いていないと遅いです。
そもそも買いかどうかはBITで3点セットを見た時点で分かりますので、無駄足になることはないでしょう。あくまで見るだけならタダですので、毎スケジュールごとにネットで物件情報を確認してみましょう。もし1年に1件でも買うべき物件が出ていれば儲けものです。1年に1件買えれば儲けものくらいのものです。過剰な期待はできません。
私も過去に数件の物件を特別売却で購入しましたが、本当に滅多に買えるものではありません。偶然良いものが出ていたらラッキーくらいの宝くじ感覚で見ておきましょう。
購入できたものは、やはりどこか傷のある物件達ですが、やはり一般の期間入札の競争入札よりはお安く入手できています。一般市場の価格と比べても安いと思います。
ただ、偶然にも競売でお安く買えるよりも、血眼になって探して一般市場でお宝物件を見つける確率の方が高い気もするので、やはり今どきは競売だから安いという気はしませんね。
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