競売物件はリスクが高い!不動産投資初心者におすすめ出来ない理由

不動産競売というと昔はヤクザな商売というイメージで、一般人が住居用に実需で購入することはもちろん、投資家が投資目的で入札するのも躊躇われるようなイメージがありました。

しかし、法改正で競売落札者の権利が非常に強力になったこと、競売情報が地方裁判所に出向かなくてもオンラインで確認できるようになったこと、競売で落札する投資家がネットで情報発信を行ったり本を出版したりするようになったこと等で、不動産競売のイメージは一新されました。

今日では、一般の投資家から転売目的の業者まで、非常に多くの方が不動産競売に入札するようになってきています。

かく言う私も、不動産投資を始めて最初の数件の物件は競売で購入しました。何件か競売で購入してみてメリット・デメリットが見えてきたので、ここでまとめてみます。

結論から言ってしまえば、今や競売で物件を入手することは全くおすすめできません。メリットが少ないうえに、多くのデメリットがあるからです。

特に不動産投資を始めたばかりの初心者大家さんが手を出すと、致命的な失敗をして不動産投資自体を諦めてしまうキッカケになりかねません。投資のベテランなら活用してもいいのかもしれませんが、ビギナーは競売に夢を見ないほうが懸命でしょう。

そもそも落札価格が全然安くない

競売で物件を入手しようと思う動機として一番大きいのは、やはり値段ではないでしょうか。幾多のデメリットやリスクを含んでいる分、市場価格よりも安い値段で物件を入手できるというのが競売の売りでしたが、これが全然安くないのです。

一昔前は確かにお得に入手できた時代もありました。しかし、今や落札価格を見てみると、一般市場で売られている価格同等どころか、優良な一般市場の物件よりもむしろ高値で落札されている物件すらあるのです。

とても投資に値しないような、ネットに掲載されている余り物の平々凡々な物件と変わらないような、しょうもない値段で落札されている物件ばかりです。

一般投資家はともかくとして、業者などがこんな値段で落札してどうやって収益化するのだろうかと疑問に思うばかりです。

過去の落札価格はBITで見ることができるので、アットホームなどに掲載されている一般市場の物件の価格と比較してみてください。全くお得でも何でも無い高値で落札されていることがわかると思います。

最大にして唯一と言ってもいい競売のメリットが、今やほぼ完全に失われてしまっているのです。そもそも最大のメリットが失われてしまっているので、競売で物件を買う意味がありません。あとは溢れんばかりのデメリットを享受するばかりです。

もっとも、極々たまに何故か誰も入札する人がおらずに、売却基準価額や場合によっては買受可能価額で購入できてしまうパターンもありますので、一縷の望みにかけて安値で入札し続けるといつかは買えるかもという宝くじ的要素はあります。

あ、ちなみにこれは首都圏(一都三県)の比較的立地の良い場所の話です。私は地方物件は一切チェックしていないので分かりません。

また、アベノミクス以降はすっかり目にしなくなりましたが、工場や倉庫物件は一般市場よりもずっと安く落札できる傾向にあります。もちろんこれも好立地のものは高いですがね。

物件の中が見られない

競売のデメリットとして大きいのは、事前に物件を内見することができないという点があります。3点セットに掲載されている物件内部の写真と、調査時の物件の状態を文字で記載した「執行官の意見」で判断する他ありません。

写真は意外と充実していますが、あくまで写真は写真ですので細かい部分までをチェックすることは出来ません。

また、「執行官の意見」も、地盤沈下などで傾きがあったり、雨漏りがあったり、設備類が外観からして大きく損傷しているなど、物件に大きな損傷がある場合は記載されていますが、細かい問題などは記載されておらず落札後に自分の目で見て確かめて初めて分かることが多いのです。

私も競売で物件を購入したら、設備類の不備の記載は一切なかったものの、給湯器が壊れていて交換に10万ほどかかった経験があります。給湯器には一見問題ないように見えて、可動してみると水漏れがありました。この様な細かい瑕疵は一切保証されません。

また物件に傾きがあるとは一切書かれていなかったのにもかかわらず、畳を上げてみたら部分部分で場所によって最大0.7度傾いていた物件もありました。

畳だと感覚が鈍るので、内部をチェックした執行官は留意事項として三点セットに書かなかったのでしょう。しっかりしたホームインスペクションを受け、水平器で測るわけではありませんからね。

実物と3点セットの内容に不動産の価値を根底から覆すような著しい乖離があった場合は、落札の無効を求めることもできるらしいのですが、ちょっと問題があったからといって落札をなかったことには出来ません。

占有者を排除しないといけない

無事に物件を落札出来た後にも試練が待っています。まず、競売物件には半分以上の確率で債務者またはそれ以外の占有者が住んでいます。

この占有者に出ていってもらうという作業があるのです。一般市場で物件を購入すれば、荷物を全て運び出して綺麗にして気持ちよく引き渡してもらうことが出来ますが、競売の場合はオーナーである債務者は無理やりマイホームを奪い取られてしまうわけで、気持ちよく引き渡しとはいきません。

今では競売落札者の権利が法律によりかなり強く保護されていますので、居座りや金品の要求などはあまり聞かなくなりましたが、やはり引き渡しは一筋縄でいかない様なケースも有るようです。

私の場合は、今まで競売で入手した物件は全て空き家の状態のものでしたので、引き渡しは比較的スムーズでした。実際に人が住んでいるのか空き家なのかは3点セットに記載があるので参考にすると良いでしょう。やはり人が住んでいないほうが引き渡しはスムーズです。

人が実際に住んでいなくても、誰かの専有状態にはあるわけですから、物件を引き渡してもらう作業は必要になります。専有解除と残置物放棄の書類をテンプレなどを参考に作って、占有者に郵送して記名押印してもらって返送してもらう流れになりますが、これを素直に返送してくれる人と完全シカトの人がくっきり分かれます。

素直に返送してもらえると非常に引き渡しがスムーズなのですが、何度送っても返送してくれないケースも珍しくありません。こうなると占有者の新居に押しかけて直接交渉か、強制執行を申し立てるしかありません。

私は直接やり取りは面倒なので、こうなってしまったら強制執行の申立を行ってきました。強制執行は普通の一戸建て物件でしたら、裁判所に支払うお金は10万円以下、鍵を開ける鍵屋に支払うお金が2,3万円、残置物保管の業者に支払うお金は2,3万円から数十万円です。

残置物の扱いでかかるお金の桁が変わります。価値のある残置物が多い場合は、一旦保管業者の倉庫に荷物を全て運んで一定期間保管する必要があるのですが、これには数十万円の費用がかかります。

価値ある残置物が殆ど無い場合は、執行官の判断で保管無しで即日専有解除、または物件内で保管して後日専有解除という措置ししてもらえます。その場合は、業者へは立会の手間賃2,3万円で済みます。

残置物を運び出す必要があるのか無いのかで、強制執行の費用は桁が違ってきますので天国と地獄です。私が経験した数回の強制執行では、すべて残置物の運び出し無しで専有解除してもらえて助かりました。おかげで、いずれも10万円から15万円程度の費用で強制執行が済みました。

最終的には強制執行を行ってしまえば、誰が専有していようと確実に排除できるので一番わかりやすくて楽です。ただ、専有している人間によっては恨みを買いますので、物件内部を破壊されたり、その後しつこく嫌がらせをされる恐れもあります。

私の場合は、強制執行したケースでも比較的穏便に終わりました。というか、強制執行の申立をして、裁判所から占有者に強制執行の予告状が送られた途端に、何度送っても返送してもらえなかった書類を返送してきたりというケースも有りました。

これは、占有者が引き渡したくなくて嫌がらせをしていたのではなく、単に書類に記名押印して返送するのが面倒だったのでしょう。裁判所から強制執行の予告が届いてビビって書類を返送してきたのだと思います。マイホームが競売にかけられるような人はとにかくズボラな人が多いのが特徴です。

残置物を処理する必要がある

さて、専有が解除され物件を引き渡してもらっても苦難は続きます。競売で入手した物件が綺麗な空っぽであるケースは極めて稀です。大抵の場合は、大量の荷物やゴミが詰まっている状態で引き渡されます。

残置物の処理義務は債務者にあるので、本来はごみ処理費用は債務者に請求することができるのですが、何よりもまず穏便に引き渡してもらうことが至上命題ですので、多くのケースでは落札者がお金を出して処理することになります。そもそも債務者は物件を手放してもローンの残債が残るケースが多いので、払えるお金がないのです。

このゴミ処理が非常にお金がかかるんです。ごみ溜めのように荷物がパンパンに詰まっている物件はもちろんのこと、写真では意外と残置物が少ないなと感じる物件でも、実際にゴミ処理を実施してみたら予想を遥かに上回るゴミの量だったりしがちです。

ゴミ処理費だけで何十万円もかかるケースも珍しくありません。自分がその物件に住むために買った場合はともかくとして、不動産賃貸業の事業として物件を購入した場合は、当然一般の家庭ごみとして捨てることは出来ません。

そもそも、膨大なゴミを目の前にして分別して処理することは不可能です。混合廃棄物として引き取ってくれる産廃業者に頼らないことには、処理だけで尋常じゃない時間がかかってしまいます。

安く買えて、不動産屋に支払う仲介手数料もなく、登記の際の司法書士の手数料もなく、コスト面で有利とされる競売ですが、入手後に専有解除の強制執行費用や残置物の処理費用で数十万、下手をすれば100万円超えの費用がかかるので、この辺りを計算に入れるとコスト高の可能性もあるのです。

というか前述の通り、そもそも競売物件全然安くないですからね。安くないうえに入手後に余計な費用がかかるケースが多々あるということを知っておく必要があります。

競売にかかるオーナーはだらしなく物件を汚しがち

専有解除を行って、残置物の処理も完了して、やっとここで一般市場で入手した物件と同じスタートラインに立ちました。

しかし、ゴミを処理して物件内を空っぽにしたからといって、そのまま即賃貸募集にかけられるわけではありません。ゴミが詰まっているくらいの状態が多いため、建物自体も傷んでいる場合が多いのです。壁紙やクッションフロアを張り替えたくらいで貸せればよいのですがそう上手くはいきません。

雨漏りや傾きなどの大事から、ガラス割れや調味料をこぼした跡など、大なり小なりの問題を放置しがちな傾向にあるため、建物にダメージとして蓄積されがちになっています。

床がベコベコになっている場所を、すぐに対処すれば良いものを、分厚いジュータンを何重にも重ねてその場しのぎをしたり、屋根に少しヒビが入った時点で修理すれば良いものを、長年放置して下地まで雨水が染み込んで腐ってしまったりと、ズボラ故の問題の拡大の傾向が見られます。

その他、大掃除など定期的に念入りな物件の掃除をしないため、長年の汚れがこびり付きがちです。また、柱に画鋲やネジを無造作に打ち込んでみたり、子供がシールをベタベタ貼ったり落書きをしたり、一般の家よりもマイホームを大切にしていない傾向も感じられます。

三点セットに掲示されている建物の状態は、あくまでも執行官の調査時にざっと見た印象に過ぎず、建築の専門家が床下や天井裏まで隈無く調べたり、レーザーで傾きがないか調べたりしている訳ではないということを覚えておく必要があります。

踏み込んだらマットのように床がぶかぶかする場合などは3点セットに記載されていますが、少し床が甘いくらいでは何も記載されていません。ペットを何匹も飼育していて激臭が染み付いている場合の記載はありますが、家中から古臭い匂いがする程度のことは記載されていません。あくまでも所有権が移って室内に踏み込んで初めて状態が詳しく分かるのです。

一種の賭けと言えます。そもそも、値段が安いことから賭ける価値があるのですが、今の競売全然安くないですからね!わざわざリスクを冒して、安くもないものを購入する意味が分かりません。

まとめ

ということで競売物件には、一般の物件とは違って様々なリスクが有るのです。そのリスクを考えても市場価格よりも大幅に安かったため、リスクを冒す価値があったのですが、今では高値で落札されるようになってしまったため全く旨味がありません。

それでも稀に安く落札できることもあるので、十分に慣れたベテラン投資家が安値で入札し続けるのは悪い選択ではありません。

ただ、リスクの割に全然安くないため、初心者大家が参入するのはやはりおすすめできません。相場観のないまま、全然落札できないため今度こそはと異常な高値で入札してしまっては本末転倒です。オークションもそうですが、熱くなったら負けです。

そもそも今では競売は全く安くないんだということをよく認識しておくべきです。このくらいの値段だと思った額で落札できないのは当然です。今や競売は明らかに高いのですから。

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