不動産競売の落札後の流れ 引渡命令・立ち退き交渉から鍵の引き渡し
前回の記事で競売の物件検索から入札までの流れを説明いたしましたが、今回は無事落札できた後の流れについて解説します。
開札日にBITの売却結果のページを見ると、いくらで落札されたのか結果を見ることが出来ます。自分が入札した金額が売却価額として表示されていれば、あなたが落札者です。
落札したらその後の手続に必要な書類が郵送されてくるのを待ちます。開札期日の3開庁日後の売却決定期日に売却の可否が決定され、売却決定から1週間以内に執行抗告の申し立てがなされない場合は売却が最終決定し、売却許可決定の約10日後に郵便で必要書類が送られてきます。あまりに書類が届かない場合は裁判所に連絡してみましょう。
落札金額から保証額を引いた残額を支払う
裁判所から届く書類には、落札金額から予め預けてある保証額を引いた残額を支払うための案内が入っています。案内にしたがって管轄の地方裁判所の支部に出向き残額支払の手続きを行います。
残額の支払い及び裁判所での手続きの期限は、売却決定期日からおおよそ1ヶ月となっていますので、期限に注意しましょう。期限は裁判所から郵送される案内に記載されています。
送られてくる書類の中には残額を振り込むための専用の振込用紙が入っていますので、こちらを使って予め残額を振り込んでおきます。
残額を振り込んでも手続きが完了したことにはなりませんので注意が必要です。銀行の領収印が押された振込用紙の控えと、郵送されてきた通知書、住民票(個人で入札)か履歴事項全部証明書(法人で入札)、固定資産税評価証明書、落札した物件全ての登記簿謄本、書類で指示があった金額の登録免許税と郵便切手を持って裁判所の執行官室に出向きます。実際の手続きは民事部不動産執行係などで執り行われますが、執行官室で聞けばどこの課で手続きを行うのか教えてくれます。
さて必要な持ち物ですが、残額を振り込んだ領収の控えはいいですね。あとは郵送されてきた書類は全て持っていきましょう。さらに本人確認書類(住民票、履歴事項全部証明書)です。あとは下記の通り。
固定資産税評価証明書は、物件がある市町村の役所の建築科などで取得することが出来ますので、予め取得しておきましょう。取得には裁判所から郵送されてきた売却決定の通知書が必ず必要になります。見ず知らずの人間に固定資産税評価証明書を発行してくれることはありません。自治体によって異なると思いますが、発行手数料は200円程度です。
落札した物件全ての登記簿謄本も必要になりますので、予め法務局で取得しておきましょう。今はどこの法務局でもどこの物件の謄本も取れますので、物件所在地を管轄する本局まで出向かなくても、自宅近くの法務局の出張所でも入手できます。謄本は誰でも必要書類などなくても入手できます。発行手数料は600円です。
競売物件は、複数の土地と建物など、物件番号の数だけの不動産で構成されていますので、必ず全ての物件の謄本を取得する必要があります。
あとは登記に必要な登録免許税と郵便切手です。郵便切手は不動産の所有権移転の登記完了の書類(登記識別情報通知など)が送られてくる際の送料です。競売に伴う所有権移転登記は裁判所権限で行ってくれるので、通常の不動産取引のように司法書士のフィーは必要ありませんが、郵送費はさすがに落札者負担となります。
登録免許税のおおよその金額は郵送されてくる書類に記載されていますが、物件の評価額によって変わってくる可能性もありますので、一度裁判所に固定資産税評価証明書を見せて計算してもらってから納めることになります。納付方法ですが裁判所の支部によって異なるようで、今までの私の経験上、金額分の収入印紙を買ってくるように言われる場合と、振込用紙を使って金融機関で指定口座に振り込むことを求められる場合があります。
登録免許税を収めて、必要書類を全部提出すると手続完了となります。必要な手続きや手順については裁判所の方で全て案内してくれるので、必要なものを全て持って裁判所に出向けば大丈夫です。入札に使った印鑑などは持っていきましょう。
引渡命令の申し立て
代金納付及び必要手続完了から1,2週間程度で所有権移転登記が完了し、登記完了の書類(登記識別情報通知など)が送られてきますが、登記が完了するのを待たずして残金の納付と諸手続きが完了した時点で、売却は完了して物件の権利は落札者に渡ります。
すなわち、すべての手続きが完了した時点で、占有者に引き渡しを求めることが出来るようになります。
引き渡しには、まず裁判所から引渡命令を出してもらいます。おそらく全ての手続が終わった時点で裁判所の方から引渡命令を行うか聞いてくれると思います。
言われない場合は、今日このまま引き続き引渡命令の手続きも行いたいと言いましょう。後日改めて出向いて引渡命令申立をしても二度手間ですので、そのままの流れで引き渡し命令を申し立ててしまいましょう。
申し立てには、裁判所でもらえる申立書、本人確認書類、手数料分の収入印紙500円、不動産引渡命令の郵送のための送料分の切手1082円×2組が必要になります。占有者と申し立て者の両者に郵送する為の切手になります。
申し立てに特に問題がない場は、3~4日で不動産引渡命令の決定が出ます。そうなると不動産引渡命令が両者に郵送されます。相手方は郵送された書面を受け取った日から1週間は不服申立てをすることができます。特に申し立てがなければ引渡命令が確定となります。
占有者との明け渡し交渉
所有権が移転し、引渡命令が確定となると、占有者が物件を専有している権限はありません。速やかに物件を引き渡すように交渉を行っていきます。
裁判所から送られてくる書類に債権者側の住所の情報も記載されているため、そちらに物件の明け渡しと室内の動産の処分に同意する旨の書類を郵送します。
相手方の連絡先は事件記録を閲覧することでも調べることが出来ます。
不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売)記録は、落札者は売却許可決定期日の14時以後に閲覧することが出来ます。
返信用のレターパックも自分の住所を記載した上で同封しておきましょう。占有者に切手代を負担させるようなことがないように、気軽にポスト投函が出来るレターパックなどを入れておくのが吉です。物件明け渡しに同意する書類と物件の鍵をレターパックに入れて送ってもらいます。
この明け渡しへの同意と、動産の放棄への同意を求める書類ですが、ネットや書籍などでテンプレを見つけて真似して作成します。ガチの法的な書類となりますので、しっかり法律の専門家監修のテンプレでないといけません。なかなかネットで無料のテンプレを見つけられなかったので、私は競売不動産すぐに役立つ書式集 (QP books)という書籍を購入して、こちらに掲載されている通りに動産処分依頼書(明渡併行)を作成しました。
書類を郵送しても受け取ってもらえない可能性もあります。まずは簡易書留など手渡しで確実に受け取ってもらえるような郵便で郵送します。受け取ってもらえない場合は、特定記録郵便などポスト投函かつトラッキングも出来る手段で郵送します。
受け取っても必要書類や鍵を送り返してくれないケースも多々あります。その場合は連絡手段を調べて電話をかけるか、直接住所まで出向くこともありえます。
既にその場所には住んでいないケースや、どうしても接触を拒むケースもありますので柔軟に対応する必要があります。マイホームが競売にかかってしまうくらいですからルーズな性格の場合も多く、引き渡す気がないわけでもないのにただ書類に記載して送り返すのが億劫で延び延びになってしまっているケースなどもありました。
逆に積極的な場合もあり、こちらが連絡を取る前に、こちらの連絡先をネットで調べて(法人なのでホームページで電話番号を公開している)電話をかけてきたケースもあります。占有者は十人十色ですので、柔軟に対応する必要があります。
占有者が実際に住んでいる場合は連絡は確実につく一方、追い出すのが少々大変です。出ていってもらうために引っ越し代を負担するなどの措置が必要になる場合もあります。引っ越し代という名の立ち退き料を支払っても、それが予想される強制執行の費用以下であれば、円満に出ていってもらうほうがお互い良いでしょう。
一方既に空き家の状態ですと、連絡を取るほうが大変だったりします。相手方の情報は事件記録などに載っていますが、売却決定以降他の場所に移ってしまうこともあり得ます。また競売物件に居住しているはずが、行ってみると住んでいなかったということもあります。
占有者が住んでおらず家の中に動産があまり残っていない場合は、強制執行の費用も抑えられますので、さっさと強制執行してしまうのも1つの手です。
どうしても占有解除が上手くいかない場合の最後の手段である強制執行については、次の記事で詳しく解説していきます。
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