建ぺい率・容積率オーバーの物件のデメリットとは!住宅ローンが使えないの?
投資用の収益不動産やマイホーム用の中古戸建てを探していると、しばしば建ぺい率や容積率をオーバーした物件に出会います。
特に80年代くらいまでの家ですと、かなり頻繁にオーバー物件を見かけます。
これらを買っても大丈夫なのかという心配をしている人も多いかと思いますが、実際は大きな実害はありません。
ただし、これら物件は住宅ローンが通らないため、現金買いが基本になることと、処分する際にも現金買いできる人しか買えないためハードルがあるということは理解しておく必要があります。
いずれにしろ正しく理解して購入すれば、特に恐れるようなものではありません。
私も投資用の戸建てでこの手の物件を所有していますし、私の会社の倉庫もこの手の物件ですが、今までに何が実害があったことはありません。
建ぺい率・容積率オーバーの物件がなぜ存在するのか
この手の物件が数多く存在するのは、特定行政庁に申請しないで増築を勝手に行ってしまったものや、端から違法承知で建築確認した築面積よりも大きく建ててしまった建物がそこそこ多いからなのです。
建て替えではなく大規模改築や増築であっても、本来は建築を管轄する特定行政庁(多くの場合は市町村役場の建築課)に建築確認申請をする必要があります。※一部例外あり
しかし、何も報告せずに勝手に増築工事を行ってしまうということは、そう珍しいことでもないのです。めんどくさかったり、コスト面の問題などもそうですが、何より容積率が余っていないと増築できませんからね。
また、新築時においても、昔は建築確認申請は適法の築面積で申請しても、実際には少し大きく建ててしまうということが当たり前のように蔓延っていたのです。
オーバーしている物件は住宅ローンが通らない?
勝手にオーバー物件にしてしまうことは、いくら建築業界や不動産業界を規制をしても当たり前のように破られていたのですが、ある時オーバーした物件には住宅ローンを通すなと金融業界に規制をかけたところ、すっかり収まったそうです。
何しろオーバーした違法建築であると、住宅ローンが通らないため売れなくなってしまうのです。こうなってしまっては建築不動産業界もひとたまりもありませんので、一気に淘汰されたのです。
これが劇的な効果を発揮した結果、近年は違法な建築物はなかなか見かけなくなりましたが、1980年代くらいまでの建物ですと当たり前のようにオーバー物件が存在します。
こういった物件を中古で買う場合は、住宅ローンが通りませんので現金買いが基本になります。こなれた値段の物件ならキャッシュで買えますが、中古でもなお1000万円以上する物件ですとなかなか難しいのが現実です。
自分は貯金が豊富で余裕でキャッシュで買えても、逆に自分が中古で物件を処分する際には困りまして、買う側が住宅ローンが使えないのでなかなか売れないのです。
投資用のローンでもなかなか融資をしてもらえませんが、一部ノンバンクを中心に融資をしてもらえる金融機関もあるようです。
違法建築だと是正措置を求められることはあり得るのか
建ぺい率や容積率を上回った物件が建っているということは、現在違法状態の建築が建っているということになります。
一見何の問題もないような家に見えても、完全な違法建築ということになります。違法建築を現在進行系で所有しているとなにか問題になるのでしょうか?
結果的に問題にはならないケースがほとんどですので、大きな心配はいらないでしょう。あくまでも完全な違法建築ですので、胸を張って堂々とするのは何か違いますが、心配するほどのことではありません。
原則的には、オーバー物件には是正勧告などが出され、早く建ぺい率や容積率が適正範囲内になるように改善しなさいと指導が来ることになっています。
なってはいるんですが、実際に是正するとなると建物を一部壊して容積を減らさなくてはいけませんので、全く現実的ではありません。変にいじるよりも、新築のほうが安くつく可能性もあります。
実際に是正措置を取るように求められたケースというのは極めて稀です。私が知る限りでは聞いたことがありませんし、どの不動産屋に聞いても聞いたことがないと言います。
以前に取引した某大手の不動産業者の担当者の話では、さいたま市に問い合わせたところ、さいたま市ではオーバー物件であっても是正措置を求めることは通常はないと言っていたそうです。
新たに建てる分については厳格に管理しているようですが、既に建ってしまっている違法建築については大目に見ているようですね。
おそらく他の多くの自治体でも、同じような措置だと思います。いちいち全戸調べたりすることは現実的ではないですからね。
建て替えに大きなデメリットなので土地の価値が思ったよりも低い
キャッシュで買えるだけの現金がある人にとっては、特に大きなデメリットはないオーバー物件ですが、よく価値を考えて買値の妥当性を見極める必要はあります。
というのも、多くの方は上モノの良し悪しと値段で物件を決める傾向にありますが、上モノの価値が大きく擦り減っている中古住宅においては、むしろ土地の価値こそが注目されないといけないのです。
大幅に容積率オーバーした物件が、相場より安いからと飛びついてしまうと、実はその半分の築面積の物件しか建てられないポテンシャルの土地だったなんてことがあり得るのです。
そうなると、建っている建物に見合わない土地の価値しかないことになりますので、値段はむしろ土地の方を基準に判断しないといけません。
投資用の収益物件でありがちですが、相場より安めで利回りもしっかりしている物件でいいなと思ったら、オーバー物件で本来はずっと小さな建物しか建てられない土地だったりするケースがあります。
いくら上モノが大きくて家賃がしっかり取れるといっても、その収益ポテンシャルは本来は建てられない違法建築を建てることで生み出されているわけで、その物件のポテンシャルではないのです。
今は違法で100平米の家が建っていても、建て替え後は80平米の家しか建てられないというような話ならまだマシですよ。
安く売られている家でありがちなのが、もともと狭小住宅で50平米しかないのに、その面積すら違法建築で、建て替えの際は30平米の建物しか建てられないなんていう話です。
元々狭小の住宅で小さな敷地面積ですと、建ぺい率・容積率を是正して正しく建て替えると、もはや実用性皆無のネズミ小屋になってしまう土地もあるので注意しましょう。
こういった物件は、実質的に再建築不可の物件に等しいものです。