不動産投資の手法別のリスクとリターンで考える 初心者に向いている投資スキームとは
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンの投資の代表格で、元本が保証されている預貯金や個人向け国債などに比べればリスクがありますが、株式投資やFXに比べれば格段に安定した投資です。
しかし、ひとまとめで不動産投資と言っても様々な投資手法があり、スキームによっては極めてハイリスクなものもあります。同じ不動産投資でもどの様な手法を取るかによって天と地の差がありますので、事前にしっかり勉強しておく必要があります。
事前に詳しく調べて計画を立てれば立てるほど安全になり思った通りのリターンが期待できる分、自分の手が届かない世界で値が動いてしまう株式投資などと比べて安全ですが、知識もなく営業マンの言うがままに太いRC物件などをフルローンで購入してしまうと投資家人生終了の恐れがあります。稀に人生そのものが終了することも・・・
どのような投資手法があるのか、どのような投資スタンスが自分に向いているのか、じっくり見極めてから投資戦略を練らないと、あとで後悔することになります。
というかより後悔してももう遅く、どうしようもない状態に陥ってしまいます。
ここでは代表的な投資手法をいくつか見ていきましょう。自分の年齢、ステータス、性格、目的などを総合的に考えて、どのような投資スタンスを取ればよいのか見極めていく必要があります。
それでは難易度の低い順に見ていきましょう。はじめは初心者が最初に検討しがちなワンルームマンションの区分所有からです。
一番お手軽だがあまり儲からない都心のワンルーム投資
突然あなたの携帯電話に知らない電話番号から電話がかかってきて、何かと思えば不動産投資の営業電話が始まるというケースが近年増えています。
こういった営業電話の投資なんて絶対に行ってはいけませんが、多くのケースで新築ワンルーム投資など、区分所有の物件を高額で売りつけられるパターンになっています。
そこまで悪質な営業でなくても、世の中にはろくでもない物件を売りつけようとしている不動産業者もゴロゴロあって、初心者がハマりがちなのが転売で異様に高価な値段で区分所有のワンルームなどを売りつけられるケースです。
都心の物件だから将来も安心ですよとか、区分所有だから少額からはじめられますとか、年金代わりになりますとか、税金対策になりますとか、色々と営業トークを展開してきますが、そもそもワンルーム投資というか区分所有自体があまりおすすめできる不動産投資ではないのです。
ましてや昨今の不動産価格の高騰で、東京都心の物件など利回り5%などという低利回りも珍しくありません。5%ってもう不動産投資を行っても良い基準を下回ってしまっているでしょう。現金買いで何とかという感じです。
融資を引いて買う場合は、高属性で金利1%以下で借りられる人でもイールドギャップ(利回りと借入金利の差)が4%になってしまうのに、ノンバンク系で金利3.9%とかで借りて買ってしまったら、イールドギャップが1%程度になってしまいます。何かあったら即持ち出し地獄です。
高騰している都内の物件など今は買い時ではないのです。じゃあ郊外の区分所有マンションがいいのかと言うとそうでもなくて、都内に30分以内で通勤できる駅から徒歩5分以内など、よほど条件の優れたマンションでなければ将来客付けに苦労することになるでしょう。しかし、好条件物件は郊外でも高いという・・・
東京都心など需要の多い地域の区分所有には、空室率が低く、とにかく管理が楽という大きなメリットはあります。管理の楽さは特筆モノで、本当に不動産投資をしているのかというくらい手間がかかりません。全部業者がやってくれます。まるで証券投資をして配当収入を受け取っているかのようです。
しかし、その圧倒的な楽さを上回る圧倒的なデメリットがとにかく儲からないことです。ただでさえ利回りが低いのに、マンション全体の管理は管理組合と管理会社、区分所有部分と客付けは賃貸管理会社に任せているため、実質利回りの低さには定評があります。
悪徳業者に高値で売りつけられた場合は、初月から持ち出しというケースもありえます。これを税金対策と宣って売りつけてくるわけですが、投資を行って毎月赤字で持ち出しになるって根本からオカシイでしょう。
まともな業者からまともな値段で買って、なおかつ現金買いであっても、それほど儲けが多くはない投資ですので、区分所有はとにかくおすすめできません。
初心者が最初の1物件目として練習で買うくらいのものです。
現金で手頃な戸建てに投資してじわじわ拡大
ワンルーム区分所有と並んで初心者のはじめての投資の対象となることが多いのが戸建て投資です。郊外の築30年以上の中古戸建ですと500万程度で購入できるものもあります。こういった比較的少額で買える中古戸建を買って戸建賃貸にするのです。
都心のワンルームは愚か、郊外のファミリータイプの区分所有マンションよりも安いくらいですので、現金一括で購入するのも良いでしょう。金融機関もあまり小ぶりな物件の融資は面倒なのでやりたがりません。やってくれないわけではありませんが。
どうして区分所有よりも戸建ての方が優れているのかは以下の記事で解説しています。
戸建て投資は非常にメリットが多いため、変な物件を購入しなければまず損をすることはありません。変な物件を売りつけられないように極限まで勉強をしましょう。どの投資手法を選んでも、本人が勉強していなければ同じことです。勉強していない人は確実に失敗して大損します。
都市部郊外の好立地の戸建てを、安く土地値付近で購入できれば、まずほとんど損をすることがありません。ましてや現金買いであれば何の心配もいりません。
デメリットは前述の記事でも解説していますが、とにかく資産規模の拡大スピードが遅いことで、中級以上の投資家は1棟アパートや1棟マンションに移っていきます。
地道に戸建てでジワジワ拡大していくことも出来ますが、途方もない労力と時間が必要になってきます。デメリットらしいデメリットもない投資手法ですが、とにかく手間がかかり鈍亀なのがたまにキズ。
ボロ戸建てを冗談みたいな激安価格で買ってセルフリノベ
戸建て投資の亜種として、ボロ戸建て投資という手法があります。もはや売り物にならないボロボロの廃墟を、土地値を遥かに下回る信じられないくらいの安値で買い叩いてきて、セルフリフォームでキレイに直して貸し出す手法です。
最大の特徴は驚異の利回りが出ることで、利回り20%台や30%台は当たり前、中には利回り50%とかで回している猛者もいます。ちょっと特殊な事例だと、ほとんどタダ同然の価格でもらってきて、利回りが100%超えてしまう事例もあります。
私は東京郊外の都心まで容易に出られる立地で、500万円など一定以上のお金を出して戸建て物件を取得していますが、これは将来需要を見越してのことです。利回りはボロ戸建てには到底及びませんが、長く貸せるように考えて買っています。
しかし、私の知り合いは、地方の立地の宜しくない地域で、50万円とかで築古の戸建て物件を購入して、リノベをして利回り50%とかで回していたりします。これだと大まかな計算で2年で回収できてしまいますからね。立地に大変リスクが有るようで、実は2年後には遥かに得をしている計算になります。
ただボロい物件を買えば良いということでもなく、ボロいとリフォームに高額なコストが掛かってしまいます。1戸建てのフルリノベを総合リフォーム会社に依頼すると400万500万とかの見積もりが普通に来ますからね。いくら本体を安く買っても、仕上がりが高ければゴミ利回りになってしまいます。
これを解決するのがセルフリフォームや分離発注で、リフォームに関する膨大な知識は必要になりますが、極めればリフォームコストを数分の1にできます。
カリスマ大家などで超高利回りを叩き出している人は、地方のボロボロの物件を鬼差しで購入して、セルフリフォームやお抱えの職人に分離発注して格安でリフォームを行っているのです。だからこそ人々の目を引く超高利回りが作り出せるわけです。
普通にやっていて利回り20%以上を達成することは困難か不可能です。達成しているのは超々クソ立地か、超々ボロボロ物件を自分の労働力を入れることで格安で直しているパターンだけです。
高利回りな代わりに、自分の労働力や手間を惜しみなく投入する必要があり、都心のワンルームとは真逆で利回りが高い代わりにとてつもなく大変な思いをすることになります。
もはや不労所得なんて呼べる代物ではありません。カリスマ大家とかも書籍やメルマガに利回り○○%とか書きたいがために労働力を投入して大変な思いをしている訳で、普段は普通に工事を外注していたりしますからね。高利回りを嘯いているカリスマ大家の多くがインチキです。
さてこのボロ戸建て投資ですが、とんでもない利回りは大変魅力ですが、あまりにも大変なため初心者には絶対におすすめいたしません。最初からこれをやってしまうと気が滅入ってしまい確実に脱落します。
融資を引いてレバレッジを掛けて積算価格の出る地方のRCマンションを1棟買い
最近というか、ここ10年ほどのサラリーマン大家ブームで最も脚光を浴びているというか、多くの書籍やセミナーで薦められているのが、融資を使ってガンガンレバレッジを掛けて、急速に資産規模を拡大する手法です。
不動産賃貸業としての成績ではなく、サラリーマンというステータスを使って金融機関から融資を引くことで、エリートリーマンなら億単位の融資を引き出すことが出来ます。
これで1棟モノのマンションやアパートを買っていき、どんどん投資規模を拡大するのです。よくいるメガ大家と呼ばれている人々はこのタイプで、資産規模10億とか嘯いていますが、その実態は資産10億で借金9億5000万円だったりするわけです。
別にレバレッジを使って資産を拡大することは全然悪いことではなく、不動産投資の醍醐味だったりします。私ももちろん融資を引いて買っている物件もあります。
融資であろうが現金買いであろうが、良い物件さえ買えていれば何の問題もありません。良い物件情報があり、なおかつ融資を引けるステータスがあるなら、行かない理由はありません。
ガンガンお金を借りて買ってしまえばいいのです。利回り15%位で回るマンションを1億円で買えるとして、金利1%でフルローンやオーバーローンで買えるなら、何らリスクはないでしょう。問題は金額ではなく内容です。
利回り15%ならコストや税金を考えないと大まかに7年ですべて回収できます。1億借金というととてつもなく恐ろしい感じがしますが、7年運用できれば借金はなくなり手元に年1500万円を生み出すマンションが残るのです。7年後には資産1億、家賃収入1500万円の資産家ですよ。
一方、この物件が利回り5%だったり、利回りが高くてもボロボロで修繕費がかさんだり、立地が悪すぎて空室率が高すぎたり、借入金利が4%とかあったら一気に苦しくなります。
これは借入額が1億ではなく、2000万年のアパートであっても同じことです。借入額が少なくても内容が悪ければ結局リスクの塊です。2000万円の借り入れでもクソ物件を買ってしまえば破綻してしまうでしょう。
さて、この急拡大スキームですが、皆RCのマンションを買いたがるんですね。RCというのは鉄筋コンクリート造の建物のことです。なぜRCを買うのかと言うと、積算価格に関係があります。
積算価格というのは銀行が物件を評価する時の指標で、この建物及び土地にどれだけの価値があるのか残っているのかという値です。建物の価値は、会計上は木造で22年、S造(重量鉄骨)で34年、RC造で47年でゼロになります。
つまり木造であれば、築22年でもう建物の価値がゼロと見なされてしまうのです。中古の物件を買うとなると多くのケースで22年は超えたものになるでしょう。築20年以下の比較的新しい物件は十分に値段が下がっていないので、ヘタをすれば新築を建てたほうが効率が良い場合もあります。
しかし、22年以上経っていると建物の価値がないわけですから、土地値だけが銀行の出す担保評価ということになります。※厳密にはそんなことなく、もっと柔軟性を持って評価される。
こうなると購入する物件の担保評価が足りないため、別に共同担保を出すか、頭金として不足分をキャッシュで出す他ありません。多くのサラリーマンにとっては多額のキャッシュは出せないため、担保価値を高く見積もってもらえる高積算の物件を買おうとします。
これが地方のRC物件なわけです。RCは法定耐用年数が47年のため、多くの場合でまだ建物自体の価値が残っています。したがって土地値に加えて建物の残存価値もプラスされた積算価格になるため、銀行から高く評価されるのです。
地方なのは単純に東京近郊は高くて買えないからです。結構築年数が行っていても人気の東京近郊は値段があまり下がりません。そのため、残っている積算価格に対する販売価格が高くなってしまうので、フルローンやオーバーローンを借りるための担保評価が足りません。そこで人気がなく値段が下がりやすいけど、積算価格はしっかり残っている地方のRC物件になるのです。
地方のRC物件ならそりゃまあ買えるでしょうよ。でも買えてもそれが良い物件とは限りません。まず地方という時点でよろしくないです。余程安く買えて高利回りなら何の問題もありませんが、資産規模を急拡大しているメガ大家の話を聞くと、地方RC物件で利回り10%とかで平気で買っていますからね。破綻はしないでしょうけど、それって最後売り抜けた時にトータルでどれだけ利益が残るのかなと・・・
あとRCというのがよろしくない。RCは住む側からすれば最高ですよ。気密性抜群で断熱性もあり夏涼しく冬暖かいですからね。あと遮音性も木造と比べれば段違いです。
しかし大家側からすると何も良いこと無いのです。まず固定資産税が高いです。これは木造よりも重量鉄骨、そしてRCという順に高くなっていきます。大型のマンションとか持っていると固定資産税に目が飛び出ます。
そして、維持費も高いのです。中古物件を所有していると、しばしばどこかしら壊れるものですが、木造と比べてRCは修繕にとにかくカネがかかります。木造よりも頑丈なイメージがあるRCですが、色々修理やメンテナンスは必要になります。そしてそのコストが高い!エレベーターとか付いている物件だったら最悪です。
つまり、資産規模の拡大でフルローンで買いまくることのみにコミットしていると、地方で大して利回りも高くない維持コストが高い物件を億単位で抱えてしまうことになりかねないのです。本当にそれでいいんですかと。
融資を使って資産規模を拡大することは大賛成ですが、いたずらに規模の拡大のみを追い求めないで、投資の質を高めていくことのほうが重要です。
まとめ
ということで不動産投資の代表的な投資手法をいくつか見てきましたが、どれも一長一短でメリット・デメリットがあります。
私がおすすめする、というか実践しているのは、まずは現金をある程度貯めて、キャッシュで東京近郊などある程度都市部の戸建て物件に投資を行っていく手法です。
現金で何軒も買い進めることが出来る人はなかなか少ないでしょうから、融資も組み合わせつつ戸建ての数件を増やしてみましょう。
戸建てで経験を積んだら、集合住宅に移行して資産規模の拡大速度を加速します。なかなか良い物件はありませんが、やはり東京近郊など都市部のほうが良いでしょう。
地方の悪条件の物件しか融資が引けないようでしたら、ぐっと我慢して買わないのも勇気です。もちろん20年後振り返れば、効率が悪くても結果的に見ればあの時投資しておいたほうが良かったと後悔することもあるでしょう。しかし、その20年は波乱万丈地獄の毎日だったかもしれません。実際にどうなるのかは実際にやってみないと分かりません。そしてやってみて失敗したらリカバリーすら困難なこともあり得るのです。
融資がおりないならコツコツとキャッシュを貯めて、戸建てを年1件などチビチビ買い進めていくのも乙なものです。耐用年数を超えていても築古戸建てに融資してくれる金融機関もありますので、毎年少しづつ買い進めるのも良いでしょう。
あまり築古で積算が出ない物件ばかり融資で買っていると、帳簿上の資産と負債のバランスで大きな融資が受けられなくなる可能性もあり、規模拡大は叶わなくなるかもしれません。
最初から高積算のRCの1棟物をドカドカ買っていって限界が来るまで一気に買い進めるのが良いのか、一気にメガ大家を目指すのを諦めてコツコツやっていくのが良いのかは、個人のステータスや投資へのスタンスによって変わってきます。
自分はどんな手法が向いているのかよく考えて、どういった戦略で買い進めるのかを検討してから買い始めましょう。よく考えずに最初から一気に進めてしまうと、途中で軌道修正できない立場に陥る可能性もあります。
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