家の床の傾きを修理する方法 施工業者や工法の特徴と値段の違い

大きな地震の後、なんだか家が全体的に傾いてしまっているような気がする、最近自宅にいるときに立ちくらみがしたりふらついたりすることがある、などなど何だか違和感を感じることってありませんか。

家や床が一定以上傾いていると、ただ立ったり座ったりしているだけで違和感を感じたり、傾きがひどい場合は体調不良を覚えることもあります。

国土交通省の指針では、新築住宅で0.17度、中古住宅で0.34度を超える傾きは、欠陥住宅とされています。完全に傾きゼロという建物もレアですが、これ以上の傾きがある建物は問題があります。

実際は中古住宅の基準である0.34度を少し超えた程度では、なんの問題もなく生活を送ることができます。自己所有の自宅であれば、少しくらい越えていても特に気にする必要はないでしょう。傾きがどんどん進行している場合は別ですが。

ただ、0.5度くらいを超えてくると、流石に鈍感な人でも明らかな違和感に気がつきます。自分では意識していなくても、体は無意識のうちに傾きを感じ取り、気が付かないうちに体調不良に結びついたりするため注意が必要です。

一定以上の傾きがある場合は、傾きを修理しないと安心して健康に住むことは難しいのです。傾いた家で騙し騙し生活している人もいますが、重大な健康への影響が懸念されます。

そこで、我慢ならないレベルの傾きがある場合は、傾斜を修正する工事が必要となります。お金はかかりますが、家族の健康と自宅の寿命を考えると必要な工事になります。

とはいえ、これがべらぼうに高いのです。リフォームというのは何かとお金がかかるものですが、この傾斜修正の工事というのは、中でも最も高い部類の工事になります。

どの程度傾いているのか、家全体か一部なのか、地盤の状態はどうなのか、工事車両は入れるか、隣の建物と近接しているかなどなど、条件によって見積もりは大きく変わってきますが、大規模な工事になれば300万円から500万円くらいかかってしまうこともあります。

見積もりが曖昧な業界でもありますので、どういった工法があるのか、どういった工事が必要なのかをしっかり勉強しておかないと、酷いボッタクリや手抜き工事に見舞われてしまいます。

そこで本日は、建物の傾斜を修正する工事の工法と特徴、それから大体のコストについて解説していきたいと思います。

床のレベル調整

傾きが比較的穏やかな場合は、床のレベル調整で誤魔化すことができます。すなわち家自体は傾いたままの状態にしておいて、傾いた床を嵩上げして水平にして誤魔化す手法です。

家全体が大きく傾いてはおらず、経年劣化で柱やハリがたわんで床が僅かに波打ってしまっている場合などに有効な手法です。

床板やフローリングを剥がして、床板を支える根太を水平にするためスペーサーを噛ませます。根太まで張り替えると面倒なので、根太の上にスペーサーを噛ませて床板を貼る方法を取ることもあるようです。

楽なのは和室のリフォームです。床が波打っているような築40年以上の木造住宅ですと2階の部屋は大抵が和室になっているので修正が楽です。

畳を上げると、その下地は板張りになっています。この捨て張りの下に根太が通っているわけですが、この捨て張りを剥がすこと無く既設の根太と垂直に交わるように重ねて根太を施工してしまうのです。そしてその上から構造用合板を張って洋室の床にしてしまいます。

つまり和室の洋室化リフォームの手法ですね。畳の厚みがなくなる分、捨て張りの上に根太と構造用合板とクッションフロアを重ねて施工しても、床の高さとして整合性が取れるのです。

この際、重ねて施工する根太が水平になるように、下にスペーサーを噛ませてあげることで水平を取ります。

土台上げ工法

床のレベル調整で誤魔化しきれないレベルの傾きの場合は、基礎からリフトアップする必要があり、かなり大規模な工事になります。お値段も100万円単位という規模になってきます。

建物のリフトアップで最もコストが少ないのは、基礎の傾きはそのまま放置して、基礎と建物の間にスペーサーを噛ませて水平を取る工法です。

基礎は傾いたままになるわけですから、当然基礎の沈下が止まっていることが最低条件です。基礎がまだまだ不同沈下を続けている場合は、修正工事を行った後もどんどん傾いていってしまうことになります。

基礎と建物の間にジャッキを挿入して、建物が水平になるまでジャッキアップして、基礎と建物の間に出来た隙間にコンクリートやモルタルなどを充填して水平を保てるようにします。

つまりは基礎そのものは傾いたままの状態にしておき、基礎の上部を嵩上げすることで、基礎の上面を水平にすることで、その上に乗る建物を水平に保ちます。

基礎の下を掘ったりする必要がないため、建物全体のリフトアップ工事としては比較的費用が抑えられるのが特徴です。

ただし、基礎の不同沈下が完全に収まっていることが条件になりますので、なかなか難しいところです。大地震の液状化などで一時的に沈み込んでしまって、その後は沈下が進行していないなら良いのですが、そういった場合も本当に止まってはおらずに徐々に進行しているかもしれないので本当に難しいところです。

耐圧板工法

ここから先の工法は、基礎の下にトンネルを掘って作業を行うことになりますので、コストもそれなりに高額です。その中でも一番安いのが耐圧盤工法です。

基礎の下を掘り、、基礎の下にジャッキを何基も入れて基礎ごとジャッキアップして、基礎を水平に戻します。

地面にジャッキを直接置いてジャッキアップしても、建物の重さで逆にジャッキが沈んでしまうだけになりますので、ジャッキの圧力と建物の重さを受け止めるために、地面側には耐圧盤という面積の広い鉄板を敷きます。

この鉄板の面積で、ジャッキからの圧力を支えて、建物を基礎ごとリフトアップします。

ただ、あくまでも一度は傾いた軟弱な地盤に耐圧盤を敷いてジャッキアップしているに過ぎないため、やや不安定でいつまた沈下するか分かりません。

完全に沈下が収まって安定した地盤でないと、なかなか施工する意味がない工法と言えます。安かろう悪かろうになりかねないので、あまりおすすめはできません。

ジャッキアップの工法では下で紹介するアンダーピニングのほうが、完璧に安定した仕上がりになります。

アンダーピニング工法(鋼管杭圧入)

こちらも基礎の下を掘ってジャッキアップする工法ですが、耐圧盤で支えるのではなく、地中深くに杭を打ち込んでいき、数メートルから数十メートル地下の安定して強固な支持層に届くことでガッチリ支えます。

プルプルの軟弱地盤でも、その地下には必ず固く安定した支持層があるのです。マンションなどの高層建築物は必ずこの支持層まで杭を打ち込んでからその上に建築します。そのため大地震の液状化でもマンションは傾かないのです。

一軒家では行われないこの杭打ちを後から行うようなイメージになります。はるか地下の硬い地盤まで杭が伸びて基礎をジャッキアップするので、どれだけ軟弱な地盤であっても完璧にリフトアップでき、その後再沈下することもありません。

マンション建築の際には比較的長い杭を現場で接続しながら打ち込んでいきますが、アンダーピニングの場合は基礎の下に掘った狭いトンネル内で打ち込むため、本当に短い鋼管杭を現場で溶接しながら、ジャッキで地面にめり込ませていきます。

杭を打つというよりも、ジャッキアップすると基礎と建物の重さで逆に杭のほうが沈み込んでいく感じです。そして、はるか地下の硬い支持層まで杭の先端が達すると、逆に基礎がリフトアップされます。

トンネルを掘って、短い鋼管杭を溶接しながら、少しずつ手動ジャッキで人力で打ち込んでいくため、非常に工数がかかりコストも高くなります。

非常に狭い現場でも施工でき、地盤がどれだけ軟弱でも安定したリフトアップが可能とあり、非常に有力な工法ですがコストの高さがネックで、一番高価な工事といえます。

アンダーピニング工法(コンクリート杭圧入)

アンダーピニングにもいろいろな工法があり、上で紹介した鋼管杭を何十本と基礎の下に打ち込むことで持ち上げるのが一般的ですが、コストを落とした手法もあります。

重量鉄骨の梁をベタ基礎の下に入れて、鉄骨の両端を鋼管杭でリフトアップすることで基礎を持ち上げ、打ち込む杭の数を減らしてコストを抑える工法など様々です。

本数は同じですが、原材料費と工数を減らすことでコストを抑える手法として、鋼管杭ではなくコンクリート杭を使う業者もあるようです。

方法は鋼管杭のアンダーピニングと全く同じですが、鋼管ではなくコンクリートで出来た筒を打ち込んでいきます。杭自体が安いことと、溶接したりしないため手間がかからないことから、鋼管杭よりも安く施工できます。

金属の杭でもコンクリートの杭でも、支持層まで達して基礎を安定して支えるという機能は変わりませんので、安いコンクリートのほうが良いような気がしますがデメリットもあります。

アンダーピニングは非常に短い杭を溶接しながらじわじわ打ち込んでいきますが、非常に短いものをつないでいくため溶接が肝心です。

しかしコンクリート杭の場合は、溶接せずに単純に積み上げて行く形になりますので、一体化する鋼管杭に比べると不安定です。だるま落としみたいなものですからね。

通常は機能的に全く問題ないようですが、一度大地震が起こればどうなるか誰にも分かりません。人によっては揺すられて地中でバラけてしまうという意見もあるようです。

薬液注入工法

基礎の下にグラウト材という薬液を注入することで、基礎を持ち上げる工法です。グラウト材は液体ですが、注入と同時に硬化剤と混ざるため地中で固まり硬くなります。

コンクリートやモルタルほどとはいいませんが、硬めの地盤くらいの硬さになるため、もともと軟弱な地盤であってもカチカチの地盤の場所並みになります。

支持層の上に硬化する薬液でコンクリートブロックを積んでいくイメージです。アンダーピニングが細長い杭で支えるとすると、グラウト注入は基礎の面積と同じくらいの面で支えるイメージです。

耐圧盤を敷いてリフトアップしたり、支持層まで杭を打ち込んだりと涙ぐましい努力を行うのではなく、地盤そのものを固くして面で支えることが出来るため、単純に傾いた家をリフトアップ出来るだけでなく、地盤そのものを頑丈にできます。

つまり、傾き修正のリフトアップと同時に、地盤改良も出来てしまうのです。

他の工法は小手先で家の傾きを修正しただけで、その後しばらく住んで将来建て替える際には、その強固さが引き継がれるわけではありません。

しかし薬液注入工法がしっかりと施工されて地盤が改良されていれば、次に建てる際にもある程度は安心できるのです。

もちろんしっかり施工されていることが最低条件で、この工法でも注入量が少なく支持層まで届かないような浅い表層に注入しただけで、一時的にリフトアップするような業者では話しになりません。安かろう悪かろうがあるので注意が必要です。

アンダーピニングなどで杭が打ち込まれていると、むしろ次の建築時に杭を引き抜いて撤去する必要があり大きなコストがかかります。建物を壊して土地を売却する際にも、地中の杭を引き抜いてきれいにしてから買主に引き渡す必要があります。

余計なものを地中に打ち込まず、地盤そのものを固く改良できるこの工法は非常におすすめできます。コストもアンダーピニングと変わらないくらいか、むしる安いくらいだと思います。

ただ、繰り返しますが技術力のある信頼できる業者ではないと、しっかり地盤改良が行われておらず、しばらくしたら再沈下する恐れもありますので、信頼できる業者選びが大事です。安かろう悪かろうはダメ。

また、技術力のない業者ですと、注入箇所が悪く建物から離れた塀が持ち上がってしまったり、隣の家と近い場合は隣に影響が出るおそれもあります。極端に隣と接近して建てられた家ですと工事自体ができない可能性もあります。

まとめ

いろいろな工法を紹介してきましたが、どれが一番オススメできるのでしょうか?

こればかりは現場を見て専門の業者が判断しないと、なかなか難しいのが現状です。現場の数だけ状態の違いがありますので、一概にこの方法が一番とは言えないのです。

工事業者は必ず契約前に調査に来て見積もりを出しますので、その際に相談してベストな工法を選べば良いでしょう。複数業者に相見積もりを取って判断するのも良いでしょう。

ただし、単純に値段だけで判断しないで、この業者はこの工法できちんと施工できる実力があるのかということをしっかりと見極めなくてはいけません。

安い業者はその分手抜き工事を行って、一時的に水平になって引き渡しても、しばらくすると再沈下するというケースもあるのです。

単純に値段だけで判断せずに、自分の家の状態や地盤の状態を総合的に考えて、どの業者の提案が一番良いのか見極めましょう。

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