自主管理方式の区分所有マンションはデメリット・リスク・トラブルの塊!管理組合が機能していることが重要

前回の記事で区分所有のメリット・デメリットについて解説いたしましたが、大きなメリットして管理の容易さがあります。

建物まるごと1棟を自己所有する1棟物と違って、区分所有の場合は、建物の内1部屋を使用する権利を所有しているのです。骨組みなど躯体はもちろんのこと、廊下やエレベーター、エントランスホールなどは共有部分になります。意外なところでは自分の部屋の外壁や玄関ドアはもちろんのこと、なんと窓枠や窓ガラスまでもが共有部分となります。

建物の殆どの部分を勝手にいじれない代わりに、その維持管理は管理組合が担ってくれます。管理組合は区分所有者から理事などを選出して組織されますので、当然所有者のあなたも選ばれてタダ働きする可能性はあります。ただ、大抵の場合は、持ち分の多いオーナーなどがでしゃばって引き受けてくれるので大丈夫でしょう。

というのも、管理組合が建物を管理する管理会社や大規模修繕の際の工事業者を選べるため、かなりの利権を持っているのです。こういった決定を一任する代わりに、面倒な運営を任せられるので、区分所有のオーナーとしては非常に手間いらずです。

その分、毎月の管理費や修繕積立金を取られますが、それで全部お任せにできるのは大きなメリットです。

しかし、世の中には管理組合が組織されていなかったり、日々の維持管理業務のために管理会社と契約していなかったりするマンションがあるのです。

管理会社と契約しておらず管理組合が自主的に管理業務を行っている場合や、管理組合さえ組織されておらず区分所有しているオーナーが寄り合いを開いて管理業務を話し合っているマンションのことを自主管理物件といいます。

ほとんどの大規模なマンションでは管理組合が組織され、管理会社に管理業務が委託され、月々の管理費が徴収されています。しかし、全10戸以内などの小規模なマンションでは、管理会社に委託せずに自主的に管理運営を行っている物件もあるのです。

管理会社に委託していないということは、共有部分の掃除などは行われず、どこかが壊れた場合などは会合を開いて修理の計画を立てて自分達で業者に発注する必要があります。

管理組合が組織されている場合は、オーナーの中から選ばれた理事を中心とした管理組合の面々がこういった決定を行ってくれますが、そもそも管理会社に委託していないような小規模マンションの場合は、管理組合すら組織されていない場合が多いのです。

というより、しっかり管理組合が組織されているマンションなら、管理業務は間違いなく管理会社に委託するはずです。無償のボランティアである管理組合の理事をはじめとするメンバーがわざわざ自分で色々動くはずがありません。

管理を業者に委託していない場合や、管理組合すら組織されていない場合は、マンジョンの管理自体が非常に困難になり、その区分所有者には大きな負担がかかることになります。すると、管理が楽という区分所有の大きなメリットが完全に消えてしまうことになります。

それどころか、自分で1棟まるごと所有している物件と比べて、意思決定権が分散しているので、さっぱり修繕計画が立たなかったりと非常に面倒な事態に直面します。自主管理物件の区分所有は非常に面倒な為おすすめできません。建物の管理体制がしっかりしているか、しっかり確認してから購入するようにしましょう。

マンションの自主管理のメリット

自主管理にはメリットも有り、管理会社に業務委託している一般的なマンションに比べて、月々の維持費が格段に安いという点が挙げられます。

マンションを区分所有すると、毎月管理費と修繕積立金というお金を取られます。この内、管理費は管理業務を委託している管理業者に対して払う手数料になります。これが結構高額で、安くて4000円程度、高くて15000円にもなる建物もあります。(ワンルームの場合)

それだけの大金を払っても、やってもらえる管理業務は業者によってマチマチで、管理人が管理人室に常駐している場合もあれば、巡回管理と言って週に一度管理人が原付でやって来て軽く掃除する程度の場合もあります。

高い管理費を払っていれば手厚い管理業務を行ってくれるわけではなく、業者によってマチマチなのです。中には高い管理費を取りながらほとんど何もやっていない業者もあります。この管理費は毎月ただ業者に払うだけの費用なので、何も残るものがありません。この値段は安ければ安いほど良いのです。

そこで、近年は管理組合がコンサル会社を雇い、より安い金額で高度な管理業務を行ってくれる管理会社に乗り換えを行うケースも出てきているそうです。同じ様な管理を行っているのに、管理会社を変えることで管理費が半額以下になるようなケースもあり得るそうです。

そしてその究極系が自主管理という形になります。管理会社と契約を行わずに自分たちで管理業務を行おうという形で、当然管理費がゼロになります。

その分、清掃業者を手配したり、共用部分の電灯を変えたり、エレベーター保守業者を手配したりと、管理組合の業務が増えます。そのため、管理組合が組織されているようなマンションでは自主管理はあまり多くないようです。

一方、小規模で管理組合すら無いような、オーナーが寄り合いを開いて意思決定するような物件は、自主管理をしている場合が見られます。

自主管理の場合は管理費がゼロになりますので、月々の維持コストが下がり、実質利回りも高くなります。これは大きなメリットです。修繕積立金については自主管理でもある程度徴収して貯めておくことが重要で、管理費という名目で徴収して実は修繕の為の積立に回っているケースもあります。

いずれにしろ、同じ広さの区分所有物件で考えると、きっちり管理会社が入っているマンションよりも、自主管理となっている物件のほうが月々の維持費は明らかに安くなります。

管理会社と契約しない大きなデメリット

月々の管理費が必要ないという大きなメリットがある一方、管理会社に委託していないため管理業務を自分たちで行わなければいけないという大きなデメリットもあります。

しかし、自分たちで行うわけもなく、管理がいい加減な状態で放置されている物件がほとんどなのです。そもそも、誰が管理を行うのかという問題があります。

報酬もなしに物件の見回りや掃除を行う人がいるわけはありません。各オーナーもなんで自分は1室を所有しているだけなのにマンション全体の管理を行わなければいけないんだと思うのが普通です。

結果的に適切な管理が行われずに荒れてしまうことが多いのです。掃除が行われずに汚いくらいならまだ問題ありませんが、どこかが壊れているのに放置されてしまったりすれば、誰も入居したがらずに客付けが出来ない物件に成り下がりかねません。

また、少し壊れただけなら安く修繕できるところを、誰も管理していないため長い間放置してしまい、破損が致命的なレベルまで進行してしまうこともあります。建物は誰かがしっかり管理して、少しでもおかしい所があればすぐに修繕が行われなければ寿命を縮めてしまいます。

もしも、建物1棟をまるごとオーナーが所有していれば、破損が見つかり次第すぐに修繕に入るでしょう。戸建ても同じことです。全て自分の建物なのですから、オーナーも必死です。

しかし、わずか1室のみを所有している区分所有の場合、共用部分が破損したとしても誰かが動くことはありません。致命的なレベルになるまで放置されてしまうことがほとんどです。

管理会社が入っていれば、定期的に巡回して破損箇所を見つけ、管理組合と相談の上で修理業者を手配してくれます。しかし、自主管理の場合は全て自分たちで行動しなくてはいけないのです。

管理組合すらない場合は、オーナーが集まって修理について話し合わなくてはいけません。小規模修繕であればオーナーの過半数の同意で行うことが出来ますが、修繕計画について揉めることもあるでしょう。揉めるよりも誰も仕切りたがらなかったり、そもそも話し合いに全然集まらないケースも多いのです。

管理組合が組織されていれば、オーナーが呼び出されることもほとんどなく、管理組合が決めた修繕計画について書面などで同意を求められるだけです。しかし、管理組合がない場合は、毎回会議に呼び出されるため、物件から離れた場所に住んでいる場合は地獄です。

本当になんでたかが1室を所有しているだけなのに、こんなに毎回毎回手間がかかるんだと嫌になります。手間がかからないという区分所有のメリットが完全になくなってしまいます。やはり区分所有は、管理組合が組織されていて、日々の管理業務が管理会社に委託されている管理体制が必須なのです。

修繕積立金が貯まっていない場合は地獄

何かを決める時に毎回会議に呼び出されるのも地獄ですが、それでもなんとか決まって修繕が進めばまだマシですが、その原資がない場合もあるのです。

管理がしっかりしているマンションでは、毎月の管理費の他に修繕積立金も徴収されます。このお金は管理組合名義の口座に貯められていて、建物に修繕が必要になった場合に取り崩されて賄われます。

そのため、毎月取られるお金は痛いですが、ちょっとした修繕でその都度お金を取られることはありません。また、15年に一度などの大規模修繕の際に向けて資金計画が立てられているマンションがほとんどですので、大規模修繕の際に新たに資金の拠出を求められるケースも稀です。※よほど建物が傷んでいる場合などは、積立だけでは足りずに、所有床面積に応じて負担を求められるケースもあります。

毎月痛い管理費の支払いによってマンションの管理がしっかり行われるのと同様に、毎月痛い修繕積立金の支払いによっていざ修繕を行う際にお金を出すことなく済むのです。

さて、その逆で管理体制がしっかりしていない自主管理物件の場合、修繕積立金すら徴収していない場合はもはや致命的です。修繕が必要になっても、それを直すお金がないわけです。修繕の際に、各オーナーが部屋の面積に応じた負担を強いられます。

ちょっとした修繕なら、各オーナー数万円程度の場合もありますが、躯体に致命的なクラックが入った、共有部の水道管がボロボロになり全部取り換えが必要になった等の場合、全体で数百万円の費用がかかる可能性もあります。その場合、各戸100万円超の負担になる可能性すらあります。

こうなっては払えるわけがありません。たとえあなたが支払えても、絶対に全オーナーが支払えることはありません。集合住宅というのは資産状況の異なるいろいろな人が共有しているものです。

不動産投資として区分所有していて儲けている人がいる一方、ギリギリの経済状況で暮らしているお年寄りが別の部屋を区分所有して自分が住んでいたりするのです。全オーナーが簡単に大きな金額を支払えるわけではありません。

いざという時に経済状況の違いで平等に負担することが出来ないようなことがないように、毎月少しずつ徴収してストックしておく修繕積立金という仕組みが取られているのです。毎月の徴収は痛いのですが、集合住宅の区分所有という仕組みを維持するためには絶対に欠かせないシステムなのです。

管理会社に委託しておらず管理費がないだけの自主管理物件ならまだ救われていますが、修繕積立金すら徴収していない自主管理物件はもう終わりです。本当に救いようがありません。こんな区分所有は絶対に購入してはいけません。

修繕積立金ではなく管理費という名目で毎月徴収して、共用部の電気代などを引いた残りを修繕積立としてストックしている自主管理物件もありますので、購入前に管理を行っている代表者に話を聞いておく必要があります。

修繕積立金を支払わない輩がいる

修繕積立金の制度がしっかりある自主管理物件でも懸念はあります。制度があっても支払わない輩がいるのです。管理組合が組織されていて管理会社に管理業務委託しているカッチリしたマンションでも、管理費や修繕積立金を滞納する輩は居て問題になっています。

しかし、こういった管理のしっかりしているマンションの場合は、管理組合がしっかり把握していて徴収を繰り返し行ってくれます。最悪の場合、法的手段を取り区分所有権を差し押さえるなどの措置を取ります。

しかし、管理組合が組織されていない自主管理の場合は、なかなかそこまでの措置がとれません。理由は簡単で誰もやりたがらないからです。

法的手段をとってまで揉め事を抱え込むなんて誰もやりたがりません。例えば1棟まるごとが自分の所有でしたら、その権利を侵害するような悪質な相手には法的手段をいとわない人がほとんどですが、マンションの一室を区分所有しているオーナーが、他のオーナーが支払わないからといって、しつこく徴収をかけたり法的手段を取ったりすることはありません。

したがって、支払わない輩が居ても、結果的に放置されてしまうことになります。そうなるとそれを見た他のオーナーもバカバカしくて滞納するようになり、結果的に修繕積立ができなくなり管理は崩壊します。

まとめ

以上、自主管理の区分所有マンションを1室持っている私の経験からのお話でした。私が持っているのは全6戸という小さな3階建てのマンションで、管理組合すらなく、当然管理業務の委託も管理会社に行っていない体制です。

何かあると各区分所有のオーナーが集まり話し合いを行うのですが、私は離れた場所に住んでいるのでこの手間が大変なのです。築40年近いので何年かに一度どこかしら壊れます。

一応、管理費兼修繕積立金を徴収しているため費用的にはなんとかなりますが、滞納している人も多くギリギリのやり繰りです。そのうち1戸は完全に支払いを拒否している事態ですが、強制的に徴収を行う業務を誰もやりたがらないため放置状態で、ゴネ得になってしまっています。

何十万も支払っていない状態ですので、本来は法的手段を取って追い込みをかけること必須の事態ですが、管理組合すらなく代表が居ないため誰もやりたがりません。私もわずか1室を所有するだけでそんな面倒事に関わるのはゴメンです。

こういった感じの雰囲気が蔓延すると、やがて他の人も支払いを行いたがらなくなり、修繕すら出来ない状態になりかねません。そうなったらもはやマンションは終わりです。私もこの物件に関しては、早めに売却してしまうことを考えています。少々安めでも早いところ売ってしまわないと、後々大変なことになる予感がします。

まとめとしては、自主管理の区分所有物件は、月々の管理費が要らずランニングコストこそ安いものの、管理に非常に手間がかかり面倒であるということです。管理の手間がかからないことが最大のメリットである区分所有なのに、そのメリットが完全になくなってしまっているのが自主管理です。

メリットが完全になくなるどころか、全て自己所有なら自由に行える修繕を行うにも話し合いが必要で、おまけにその費用を平等に徴収することすら困難な状況になりかねないのです。

ビジネスでもそうですが、ほぼ同じだけの権利を持った水平的な複数人が組織を動かしていくということは大変に困難です。多くの権利を持った独裁的な代表者が引っ張るピラミッド型の組織でないと組織の舵取りは出来ません。大きな利権を理事長に白紙委任してでも、管理を任せてしまうメリットは大きいのです。

区分所有のマンションを購入する場合は、各部屋のオーナーの代表組織である管理組合がしっかり組織されていて、日々の管理業務が管理委託業者にしっかり委託されているマンションを購入するようにしましょう。自主管理物件はリスクの塊です。ほぼデメリットしかありません。

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