中古のリノベーションマンションのメリット・デメリット!新築と比べて割安だが築年数に注意
アベノミクス以降のここ5年ほど、東京都心を中心に不動産価格の高騰が話題になっています。ピークは2017年前半くらいまでで、すでに後退局面に入ったとも言われていますが、劇的に価格が落ちることなく高止まりしているのが現状です。
すでに東京都心の新築マンションなどは庶民の手の届く値段ではありません。しかし、近年の住宅購買年齢層の若年層の傾向として、郊外の一戸建てよりも都心の好立地マンションを好む傾向にあります。
都心がいいけれども、高くなった都心のマンションを買うほどの余裕はないという層に人気なのが、リノベーションマンションです。
一言で言えば中古マンションなのですが、昔のイメージの汚い中古マンションとは違って、非常に綺麗にフルリノベーションが施されているのが特徴です。
新築よりは明らかに安い値段で、新築同様のピカピカの物件に住めるとあって人気のあるリノベーションマンションですが、実際はメリット・デメリット共にありますので、よく勉強してから買わないと後悔することになるかもしれませんよ。
本日は中古のリノベーションマンションを購入しようと考えている方に、リノベマンションについて解説していきたいと思います。
フルリノベーションの中古マンションとは
そもそもフルリノベーションとはどのような事なのでしょうか。
簡単に考えると大規模なリフォームと考えていただくと良いと思います。マンションでいえば鉄筋コンクリートの躯体の中に組まれた各部屋の部分を、大規模にリフォームしたものです。
通常のリフォームですと、壁紙やクッションフロアなど表層部分の張替えなどに留める場合が多いのですが、フルリノベともなれば壁を壊して間取りを変えたり、ユニットバスをまるごと交換したり、場合によってはキッチンなどの水回りの配置を変えたりと大幅に改良を加えます。
ただ単にキレイになるだけでなく、昔の使いにくい古臭い間取りが最新の間取りに変わるため、物件のイメージが一新されます。最新のマンションの部屋と遜色ないお部屋になるため、物件価値を大幅に上昇させることができます。
ただ、費用は非常に高額になるため、元々価値の高い東京都心やその周辺の物件でないと割に合わない可能性が高いのも事実です。
都心物件でも、田舎の物件でも、リノベーションにかかるコストは同じですが、施すことによって上がる価値は同じではありません。
例えば都心の中古価格2000万円の物件と、田舎の300万円の物件に同じレベルのリノベを施したとします。改修コストが両者300万円だとするとそれぞれ2300万円と600万円の仕上がりとなります。
その結果、都心物件は3000万円まで価値がアップしたりします。仕上がりが2300万円なので、700万円の価値を生み出すことになりますので大成功です。
一方で同じリノベを施しても田舎の物件は600万円にしかアップしないようなことはザラです。その場合、仕上がりが600万円なのですからトントンということになります。
トントンならまだいいほうで、下手をすればかかったコスト分の価値の上昇が見られずに赤字という結果になることもあります。
このため、リノベ物件はもともと不動産価格の高い都市部でしか見られません。
転売業社によるリノベーション物件の転売事例
上で既に例を出していますが、東京23区内で築古の50平米の区分マンションを2000万円で仕入れた業社の例で紹介します。
フルリノベというほどではありませんが、クロスやフロアタイルなど表層部の全取っ替えはもちろんのこと、ユニットバス・キッチン・洗面化粧台など水回りも全て新品に取り替えて300万くらいかけてリフォームを行いました。
諸経費を除くと仕入れが2000万円で改修費用が300万円ですので、仕上がりで2300万円ということになります。これを何と3000万円で実需向けに転売していました。
仕入れから販売まで2ヶ月とかからない早業の転売で、700万抜きですからね。美味しい商売です。リノベ転売業社は、こういったプロジェクトを何本も同時並行で進めていますので結構美味しい商売なのです。
私の知り合いの不動産業者も、この手法で年間1億円弱の粗利を生み出しています。営業マンである社長一人でやっている小さな不動産会社でですよ!
不動産の転売とはこのくらい美味しいものなのです。リノベで価値をアップさせて転売するというところがミソなんですね。普通に転売していてはせいぜい1割、かなり良くて2割抜ければ良い方ですが、リノベして付加価値を加えると大きく利益を抜けるのです。
デメリット
さてリノベ物件を買う側の話しに戻りますが、転売をしている業社にとって美味しいということは、買う側からしたら美味しくないということになります。
最大のデメリットは、本来の価値以上の価格で買うことになってしまうという点なのです。
例えば上記の例で言えば、最終的に消費者が3000万円で買ったということは、見かけ上は3000万円の価値があったということなのでしょう。東京都内の50平米の小ぶりなファミリータイプのマンションが、新品同様のピカピカの室内で3000万円ということで、若い夫婦にとっては手頃でよい物件なのでしょう。
同様の物件で新築ならこれよりも最低1千万円は高いはずですし、少なくても部屋の中はパッと見は新築と全く変わらないわけです。共用部も大規模修繕の時期によっては相当キレイに見えることもありえます。
見た目が新築とほぼ変わらず、お値段が大幅に安いとなると、惹かれる人がいるのは分かります。でも中古だし築年数もいっているからなあと思っても、営業マンの巧みな話術でお得感を演出されて買ってしまう人も多いのです。
しかし、いくら見た目がキレイでも、その実態は元々ボロボロの築古マンションですからね。新築よりも2,3割安かったとしても、築40年とかの物件と新築では実態価値に大きな違いがあるため、かえって損です。
見た目の良し悪しに誤魔化されずに、その物件の実際の価値を考えて買わないと、ボロボロ物件に高いお金を出すことになってしまいます。
見た目は同じ新築同様でも、新築ならこれから70年位は住めるのに対して、築40年をリノベした物件でしたらあと30年くらいしか住めません。値段が半額以下ならそれでも割に合うのですが、リノベ物件は結構いい値段がするので2,3割安い程度にとどまります。
また、築古であるということは、将来売却する際にも不利になることが明らかです。一度買った物件に一生住むとも限りません。10年後に転職して全く違う地に移り住むかもしれませんし、家族が増えて手狭になり買い替えする可能性もあるのです。20年後に子供が独立して、よりコンパクトでより都心の便利な物件に買い替えるかもしれません。
20年後の売却の際に、新築物件でしたら築20年の時点で売却するわけですから、新築プレミアムは無くなって大幅に値下がりしているとはいえ、まだまだ良い値段で売却できます。立地が良ければ半額以下になることはまず有り得ないでしょう。
これが買った時点で築40年のリノベ物件だったらどうでしょうか。20年後の売却時には築60年のボロッボロマンションですよ。都心でしたらまだまだ値段は付きますが、立地によっては売れない可能性もあります。
また、地味なデメリットとして、区分所有マンションの修繕積立金は築古になるほど高くなるという点があります。毎月支払う修繕積立金は、新築物件を売りやすくするために、本来積み立てなくてはいけない金額よりも少ない状態で新築として売り出されます。
したがってセオリー通りに大規模修繕を行っていくと、年々積立収支が合わなくなり、築年数が進むごとに毎月の修繕積立金の値上げを余儀なくされるのです。
メリット
デメリットばかり強調しましたが、フルリノベーションマンションにメリットが無いわけではありません。やはり値段の安さは最大の魅力です。
最近の東京都心の不動産価格の高騰は異常です。もはや庶民が手の出る値段ではありません。一流企業に夫婦でお勤めの世帯年収1500万円とかのエリート家庭でないとなかなか手が出ないでしょう。
しかし、築古のボロマンションを改修したフルリノベーションマンションなら、一流企業勤めの一馬力家庭や、夫婦で中堅企業にお勤めの中流家庭でも、世帯年収800万程度で手が出るかもしれません。
リノベ物件なら、中流家庭でも東京都心に住むことができるのです。中流家庭でしたら本来は千葉埼玉に住むのが一般的ですが、最近はとにかく都心志向が強く、東京都心にマイホームを買うことを望む層が多いようです。
まあメリットというか、都心の新築に手が出ない層が、仕方なしに中古物件を買うという感じですね。
そもそも東京都心に住めるのは、本来なら極々限られた富裕層だけなのですから、無理せず身の丈に合った郊外に住めばいいと思うのですが、不動産の将来の資産価値を考えると無理して背伸びするのが間違いとも言い切れないので難しいところです。
マイホームとしてはありかなしか
マイホームとしてリノベ物件を買うのは、はたして良いのか悪いのかという話ですが、コスト面を考えなければあまりおすすめではありませんね。
すでに説明した通り、表面上は新築同様に見えても、その実態は築古の中古物件に過ぎません。少しくらい安いからといって、大幅に価値の劣る不動産を買うことに意味があるのでしょうか。
さらに転売業社の厚い利益も乗っていますからね。実態価値よりも大幅に高い値段で買うことになってしまいます。
リノべ物件を買うくらいなら、ボロボロ物件を安く買って、自分でリフォームを手配したほうがよほど仕上がりは安くなります。ただし、素人が安くボロ物件仕入れることは難しいですし、リフォームにおいても安く仕上げてもらうことは困難でしょう。結局業社から買うしかないのです。
ありかなしかで言えば、私はなしですね。リノベ物件なんて要りません。私は不動産投資をやっていて、リノベ前の物件を色々見ていて、どれだけ汚いものがどれだけキレイになるかを散々見ていますからね。
不動産投資物件としてはどうか
では不動産投資としてはリノベ物件はどうなのでしょうか。これこそナシです。
散々繰り返しましたが、リノベ物件には転売業社の利益がごっそり乗っています。つまり物件調達価格がすでに高い状態なのです。
高く買って利回りが回るわけがありませんよね。投資としては致命的です。
不動産投資の醍醐味は、価値のない物件を安く手に入れて、そこに自分でいかに付加価値を付けて家賃を上げられるかということにあります。
セルフにしろ、分離発注にしろ、安く改修を行って物件をきれいにすることで、激安で買ったボロ物件に高い家賃で客付けをすることにこそ意義があるのです。
はじめからキレイに仕上がった物件を高値で買っていては、碌な投資にはならないでしょう。
まとめ
ということでフルリノベーションマンションについて解説してまいりましたが、要はあまりおすすめできる不動産物件ではないよということです。
確かにパッと見は新築と変わらないキレイな物件が、新築よりも大幅に安く買うことができるので、憧れの都心にマイホームを持ちたいけれど経済的に新築は無理な層には響くのでしょう。
しかし、その実態は、築古のボロボロ物件に整形レベルの厚化粧を施して誤魔化したものに過ぎないのです。新築の半額以下ならともかく、2,3割安い程度で手を出して割に合うとは思えません。
安く好立地の物件を買いたいのなら、リフォームが行われていない汚い状態で物件を安く買って、クロスの張り替えなどを自分で業社に依頼して安く仕上げるほうが効率的です。
見た目が綺麗でもあくまで古い物件なんだということを念頭に、購入する価格が妥当であるのかどうかしっかり判断してから手を出すようにしましょう。
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