都市ガス工事の資格「簡易内管施工士」とは?試験の難易度・合格率や費用も解説します

簡易内管施工士という資格をご存知でしょうか。都市ガスの工事に関係する資格になりまして、主に工務店にお勤めの方が取得する資格になっています。

私は不動産投資家として大家業をやっていまして、自分でセルフリフォームにも挑戦しているのですが、ガス関係は資格が無いと工事を行うことが出来ないため、この資格を取得してみました。

そこで私が取得した際の経験を基に、簡易内管施工師の資格の内容や取得の方法、資格取得にかかる費用と時間、そして実際に使える資格なのかどうかということについてまとめてみました。

簡易内管施工士とは

簡易内管施工士というのは、都市ガスの工事に必要な資格で、その名の通り比較的簡易な工事を行うことができる資格になります。

ガスに無知な無資格者がガス機器工事を施工した場合、ガス漏れや爆発事故などにつながる恐れがあります。だからこそガス工事というのはガス事業者や、ガス事業者が委託した専門の技術を持った施工業者が担ってきました。

このガス事業者指定の工事業者になるためには、長年ガス事業者の下請けで工事を行ってきた実績が必要になり、なおかつ年間何件以上という施工数ノルマまで設定されているそうです。独立した事業者でありながら、ガス事業者の下請けで、請け負い業者のような立場になっているのです。

そのため、都市ガス工事は一般の工務店やリフォーム屋はタッチできない領域だったのです。これではあまりに門戸が狭すぎるということで、簡易な工事に限って一般のリフォーム業者や工務店でも都市ガス工事を行えるようにしようということで、平成11年4月に始まったのが簡易内管施工登録店制度です。

フレキ管工法の登場や、継手の進化などにより、簡易な作業であれば一般の小さな工務店でも十分扱えるようになってきたため当然の流れと言えます。

工務店やリフォーム会社の社員が簡易内管施工士の資格を取得し、工事を手がける地域のガス事業者に登録することにより、簡易な内管の工事を一般消費者から引き受けることが出来るようになりました。

簡易内管施工士というものはあくまで資格に過ぎず、資格取得者の属する工務店などが東京ガスなどの地域のガス事業者に登録しなければ工事を請け負うことは出来ないのです。

また、簡易内管施工士は監督者資格ではなく作業者資格になります。したがって、資格取得者がいればその管理下で他の社員が作業を行えるわけではなく、必ず有資格者自らが作業に当たる必要があります。

簡易内管施工登録店になってできること

簡易内管施工士を雇って、あるいは社員が資格取得して簡易内管登録店になっても、工事可能範囲が限られていて使いづらい面があります。

まず施工ができるのは、既に低圧のガスを引いている一般住宅のマイコンメーター下流側からガス栓まで露出部分の配管・ガス栓工事だけです。また、そのガスメーター能力(Qmax)が16㎥/h以下でなければいけません。

また、一戸建ては問題ないのですが、マンションなどの一定水準以上の高さの建物の工事はできません。

また、飲食店などの事業用テナントの場合は、同じ建物にどのくらいのテナントが入っていて、建物全体のテナントでどの程度のガスメーターがついているかによって工事ができなくなります。あまりテナントが多い大規模な建物では工事ができません。

つまりは、一戸建てや木造2階建てアパートなどかなり小規模な住居用建物や、テナントが2,3軒入っているくらいの小規模な事業用建物の工事くらいしか請け負えないのです。

さらに、工事できる範囲がマイコンメーター下流側からガス栓までの露出部分だけというのもなかなか難しいところです。マイコンメーターから下流というのは建物の内外の殆どの部分が当たりますが、露出部分というのが問題で要するにガス管が目視できる場所でなければいけないということです。

壁の中や、床材の下などにガス管を通すことは許されていないのです。室内壁に這わせるか、室外壁に這わせるように配管するしかありませんので、仕上がりはカッコ悪いです。基本的には室外壁を這わせることになるでしょうね。露出部の定義は登録するガス事業者によって判断が分かれるそうですが、システムキッチンの筐体の内側にフレキ管を這わすことすら認められないこともあるらしく、非常に使いづらいのが現実です。

また、ねじ切りは許されていないので、フレキ管を使った工法しか出来ません。フレキ管とプッシュインパクト継手を使った簡易な工事のみ出来る資格なのです。まあこれに関してはフレキ管で全く過不足ないので問題ないでしょう。

したがって出来ることといえば、既存のガス栓の位置を動かすことや、ガス栓を増設すること、増設する位置までガス管を分岐延長配管することくらいなのです。

ちなみに、ガス栓から給湯器などのガス機器を繋ぐガス可とう管の接続は簡易内管施工士までは必要なく、ガス可とう管接続工事監督者の取得だけで出来てしまいます。

実際のガス関連の工事といえば給湯器の交換など、ガス栓から機器の接続がメインで、ガス栓の位置まで移動したり増設することは多くないでしょうから、ますます簡易内管施工士の存在意義が問われます。今まで都市ガスは引いているもののなぜか灯油給湯器や電気給湯器だったお宅をガス給湯器に変えたり、大規模リフォームでキッチンや給湯器の位置を変える等の場合でなければ、なかなかガス栓を移動したり増設したりする機会もないのではないでしょうか。

資格取得方法とかかる費用

簡易内管施工士の資格取得するには、ガス事業者が実施する技能講習を受ける必要があります。受講資格はなく誰でも受講できる一般講習は3日間、液化石油ガス設備士の有資格者は1日間の特別講習で取得できます。

東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西部ガスなどのガス事業者が一般講習を実施しており、受講者の居住地に限らず好きな場所で講習を受けることが出来ます。

事前に勉強をして当日の試験に臨むタイプの資格ではなく、手ぶらで講習に出向き3日間の講義を受けて、3日目の最後に簡単な修了試験があるようなイメージです。

したがって、長々と受験勉強をしたりする必要はなく、基本的には3日間で取得できる簡単な資格です。

取得に必要な費用は講習の受講料だけですが、これが結構高いのです。
2018年現在、一般講習で83400円、特別講習で20000円となっています。ガス可とう管接続工事監督者、ガス機器設置スペシャリスト資格保有者は少しだけ安くなります。

講習を受けるだけでほぼ合格できる資格とはいえ、割と費用はかかります。液化石油ガス設備士の資格を持っていれば特別講習で安いのですが、液化石油ガス設備士の資格は初心者が一から取得できる第一講習が工務店勤務などでないと受講が難しくなってしまい、事実上一般には門戸が開かれていないため、DIYでセルフリフォーム目的の一般人が簡易内管施工士を取得するには一般講習しかありません。

難易度と合格率はどのくらいなの

私は一般講習を受けましたが、座学と実技講習が組み合わされた講習が3日間続き、3日目の最後に学科試験と実技試験がありました。すべての事業者がそうなのか分かりませんが、たしか学科試験はテキストを見ながら受けることが出来、非常に簡単でした。

実技試験はパイプレンチすら握ったことがない私には大変でしたが、試験時間に制限がないため、ゆっくり施工すればよほどの不器用でないかぎり誰でも受かると思います。実際に講習を受けた人の合格率は余裕で9割を超えるそうです。

全くの初心者でパイプレンチを握ったこともなければ、パイプレンチの仕組みすらわかっていなかった私でも受かりましたので、すでに配管工事に携わっている方にとっては朝飯前でしょう。

ただ、講習を実施する講師も、配管工事に携わる人間が受講しに来ることを前提で講義を進めていましたので、パイプレンチの使い方くらい自習していったほうが無難だと思います。全く触ったことのない人間だと実技講習に付いていくのが大変です。基本的な工具は使えて当然の前提で進んでいきます。

不動産投資のセルフリフォームには必要なのか

電力会社でしたら東京電力や関西電力など送電事業者が地域ごとに限られていますが、ガス会社は都道府県どころか細かい地域では市町村ごとに別れているケースもあります。

東京都・神奈川県は東京ガスを中心にかなりまとまっていますが、私の住む埼玉県などは、小さなガス事業者がかなり細かく別れています。つまりは東京ガスに登録しておけば、会社のあるA市でも工事ができて、隣のB市や隣の隣のC市でも工事ができるということになりません。地域ごとの別のガス事業者に別々に登録しないと工事ができないのです。

つまり、セルフリフォームで簡易内管工事を行うというような気軽なことに使えるような資格ではないのです。ガスの簡易内管工事を業として行う業者でなければ、わざわざ登録してまでやる意義がありません。

また前述のとおり、セルフリフォームで都市ガスをいじるシーンは、給湯器の交換などかなり限られてきます。給湯器などのガス機器の交換の際は、既存のガス栓とガス機器をガス可とう管で接続する形になるため、給湯器などガス機器の設置位置を動かさない限り、ガス可とう管接続工事監督者の資格だけで十分です。

ガス可とう管接続工事監督者は1日の講習で安く(2018年現在12300円)取得できるため、セルフリフォームにはこれで十分だったりします。

ガス栓の位置を変更したり増設したりするような大規模工事の場合は、それこそ簡易内管施工登録店に工事を依頼すればよいのです。

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